絵本作家であり、製造系企業で総務企画マネージャーを務める澤田久奈さん。
子どもたちが自由に創作できる場「ふくいこども美術館」をはじめ、福井でさまざまなアートプロジェクトを手がけています。
ZEN AIR EIHEIJIでは、2025年に開催されたふくいこども美術館イベントの出店など、これまでさまざまな形でご協力いただいています。
今回は、澤田さんの創作の原点と現在の活動についてお聞きしました。
人生が進むほど、私たちにはさまざまな制限が増えていきます。
けれど澤田さんは、その制限が生まれるたびに、新しいプロジェクトを形にしてきました。
なぜ、それができたのでしょうか。
これは、澤田久奈さんというひとつの物語です。

澤田久奈(さわだ ひさな)
絵本作家・イラストレーター/ふくいこども美術館・シロマル製作所 代表
福井県あわら市出身。鉄工所で機械や工具が身近にある環境で育ち、その魅力をもとにアート表現を行う。
イラストレーターとして活動する中で、子どもをきっかけに「ふくいこども美術館」を立ち上げ、地域で創作のきっかけをつくる活動を始める。
現在は鉄工所とアートをつなぐプロジェクト「シロマル製作所」も展開。
こどもから大人まで、「つくるってわくわく」を合言葉に、創作の楽しさを共有できる場を地域の中に育てている。
澤田久奈Instagram▼
https://www.instagram.com/hisana.sawada?igsh=MTRieHJudGM3bXAwcQ%3D%3D&utm_source=qr
魔王がいなくなった王子様とお姫様は、末永く幸せに暮らせるのか。
あなたは今、制限なく自由ですか。
もしそうなら、それはとても幸せなことです。
けれど、時間やお金、仕事、そして子育て。
制限のある日々の中で、それでも自由を感じられるなら。
その自由を味わえる人は、きっと豊かな人なのだと思います。
制限のある日常の中で、最大限の物語を紡いでいる澤田さん。
その姿は、どこか絵本の主人公のようにも見えます。まるで鈴が鳴るように。
カナリアが歌うように。初夏が似合う、やわらかな口調で話される方です。
ふんわりとした雰囲気の奥に、
創作に向き合う芯の強さが見えてきました。
—— 今の活動について教えてください。
澤田:「 今は大きく二つの活動をしています。
ひとつは「ふくいこども美術館」というプロジェクトで、もうひとつが「シロマル製作所」です。
ふくいこども美術館は、廃材を使った創作を体験できる子ども向けのワークショップです。
子どもたちにとっての創作のきっかけになる場をつくりたいと思って始めました。
上手い・下手ではなく、「つくるって楽しい」と感じてもらえる場所ですね。
素材を使って自由に制作したり、フィールドワークで見つけたものを表現したりします。
最後には、自分がつくったものについて発表する時間をつくることもあります。
自分が見つけたことや感じたことを、自分の言葉で話す時間です。
子どもたちって、その瞬間にすごく輝くんですよね。
その瞬間を見るのが、すごく好きなんです。
もう一つの「シロマル製作所」は、私が携わる鉄工場を舞台にした表現の場です。
機械音や作業音など、一見アートとは関係なさそうなものを音楽や映像と組み合わせ、鉄工所とアートを軸にした活動を行っています。
子どもだけでなく、つくることが好きな人が集まれる場所になればいいなと思って始めました。
例えば、作品を見せ合ったり、
「こういうことを考えているんだけどどう思う?」って相談したり。
福井って、美術館はあるんですけど、創作について気軽に話せる場所って、意外と少ないなと思っていて。
そういう人たちが集まれる場があったらいいなと思っています。
こども美術館は子どもが入口ではあるんですけど、実際にやってみると、親御さんや大人の方もすごく興味を持ってくださることが多いんです。なので、子どもだけの場というよりは、
創作をきっかけに人が集まる場所になっていけばいいなと思っています。」


澤田さんの活動の場様子(左:ふくいこども美術館 右:シロマル製作所)
むかーし、むかし。
—— 創作の原点について教えてください。
澤田:「子どもの頃から、何かをつくること自体は好きでした。
絵を描いたり、工作したり、そういうことは自然にやっていたと思います。
ただ、当時はそれが仕事につながるとか、
「アートを学ぶ」という選択肢があるという感覚はあまりなくて。
福井って、美術館はあるんですけど、
アートを仕事として考える入口はそんなに多くないんですよね。
高校生になって進路を考える頃になって、
「もっと早くこういう世界を知っていたら違ったかもしれない」
と思うことはありました。
その感覚が、今子どもたちと関わる活動につながっていると思います。」
挑戦のレベル上げ
—— 商業デザイナーとして働いていた時代の経験も大きかったと聞きました。
澤田:「そうですね。
福井でデザイナーとして働いた後、スキルアップのために東京までイラストレーションや絵本の講座に通っていました。
その講座では講評の時間がありました。
特にイラストレーションの講座では、毎回必ずテーマが決められていて、参加している人たちは、みな同じテーマで制作します。
最後には講評の時間があって、講師の方や周りの人から作品についてコメントをもらうんです。
その時間は毎回、死ぬほど嫌でした。
でも終わる頃には、いつも「面白かった」に変わっていました。
もちろん評価されるプレッシャーはありますし、他の人の作品を見ることも刺激になります。
それが「次はもっとこうしてみよう」という気持ちにつながるんです。
自由に何でもやっていいと言われるよりも、
テーマや条件があるほうが「どう攻略するか」を考えるのが楽しいんです。
澤田さんの話の中で、何度も出てきた言葉が「没入」でした。
「枠があるからこそ、静かに燃える。」
軽やかにそう話す澤田さんは、王子様の助けを待つヒロインというより、
自分の信念で何度も立ち上がる主人公のようにも見えます。
澤田さんの話を聞いていると、創作の楽しさは「自由」だけではないように思えてきます。
テーマや条件があるからこそ、どう攻略するかを考える。
そうした経験が、今の活動の土台になっているのかもしれません。」

息をのみ、ページをめくる。
—— その経験が、今の活動にもつながっているのでしょうか。
澤田:「そう思います。
こども美術館でも、ただつくるだけではなくて、
最後に発表する時間をできる限り作っています。
自分が見つけたものや、感じたことを自分の言葉で話す。
そのときの子どもたちって、すっごく輝くんですよ。
上手い・下手ではなくて、自分の視点を言葉にする瞬間が生まれるんです。それは、私が講評の中で感じてきた
「人の作品から刺激を受ける面白さ」と少し似ているのかもしれません。」
楽しいだけではなく、少しだけ負荷がかかる瞬間がある。だからこそ、人は没入できる。
澤田さんのお話を伺っていると、
その活動の中心にあるのは「創作の没入感」なのだと感じました。
枠があるからこそ、「どう攻略してやろうか」と考える。
自分の意図や視点を言葉にして伝えることで、創作への意識が一段深まっていく。
澤田さんが子どもたちのイベントでもあえて発表の場を設けているのは、
その瞬間を生み出すためなのかもしれません。

分かり創作のやまびこが響く場所。
—— 今の活動の形は、生活の変化とも関係がありますか。
澤田:「かなりあると思います。
子どもが生まれてからは、自分の時間はどうしても限られてきました。
以前のように自由に動き回ることは難しくなりましたし、
制作に使える時間も少なくなりました。
でも、その制限があったからこそ、考え方が変わった部分もあります。
それまでは、どちらかというと一人で没頭する創作が多かったんです。
でも今は、人と一緒に何かをつくる「場」を考えるようになりました。
「ふくいこども美術館」や「シロマル製作所」も、そうした流れの中で生まれてきた活動です。
時間が限られているからこそ、その中で何をやるのかを考える。
そういう意味では、
制限があることで創作の形が変わってきたのかなと思います。
困ったことがあれば、
以前は自分で動き回って解決しようとしていました。
でも今はそうはいきません。
わからないことは人に聞き、
できないことは人にお願いする。
そうしているうちに、たくさんの人が集まるようになって
気づけばプロジェクトがどんどん増えていきました(笑)。
「つくることをきっかけに、つながりが広がっていく。」
そんな未来を、福井につくれたらいいなと思っています。

ZEN AIR EIHEIJIより

制限のある日々の中で、
それでも創作に没入する澤田久奈さん。
今、澤田さんを中心に、やまびこのような共鳴が静かに広がっています。
ZEN AIR EIHEIJIでも、
今後澤田さんとともにイベントを実施していく予定です。
もしそのやまびこが聞こえてきたら、あなたも声を返してみませんか。

